日本オランウータンリサーチセンター

おらけんマガジン創刊号

<おらけんマガジン 創刊号(2018.08.19)>

こんにちは、日本オランウータン・リサーチセンター(おらけん)です。
おらけんの活動に賛同いただき寄付をしてくださった皆様に、メールマガジンを送信いたします。
おらけんの活動報告や今後の予定などについて、数か月に1回程度配信予定です。
よろしくお願いします。
では、この創刊号を発行した本日は、何の日かご存じですか?
はい。毎年8月19日は「国際オランウータンディ」です。

 

「世界オランウータンの日」のイベントページは、こちら
https://www.facebook.com/events/219457882253706/

 

よろしくお願いします。

 

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(1) 新刊案内
「オランウータン 森の哲人は子育ての達人」
(2) おらけん今後の予定
(3) 研究者によるニュース/論文解説
(4) ボルネオ島ダナムバレイ調査報告
(5) オランウータンQ&A
(6) クラウドファンディング報告
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(1) 新刊案内:新しいオランウータンの本!
日本人著者による、初のオランウータンの単行本(ハードカバー)が発売されました。
書店またはネットで購入いただけます。

 

【書名】オランウータン−−森の哲人は子育ての達人
http://www.utp.or.jp/book/b360877.html

 

【発行】東京大学出版会
【発売日】2018年7月17日
【定価】本体価格3,000円+消費税
【概要】子育ての達人―オランウータン.アジアの熱帯雨林で暮らす「森の哲人」たちの究極の子育てを紹介.長い時間をかけて,とても大切に子どもを育て上げる母親たちの育児から,ひとりで生きていてもけっして孤立はしないユニークな社会がみえてくる.

 

(2) おらけん今後の予定
【イベント】
● 9月24日(月/祝) 上映会:10:00〜11:00、講演会:13:30〜14:30
月間動物イベント 映像上映会「野生のインドシナ──マレーシア」、講演会「木の上でくらすオランウータン」開催
[東京都・多摩動物公園]
・映像上映会は、多摩動物公園ウオッチングセンター内動物ホールにて、先着100名。
・久世が講師をつとめる講演会のみ、メールによる事前申込制(締切9月10日、先着100名)。
・詳細は下記サイトをご覧ください。
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=event&inst=tama&link_num=25066

 

● 10月14日(日)
・久世が、生物多様性に関するイベントで講演します。
[大阪府・天王寺動物園]

 

● 11月17日(土)〜18日(日)
・「第21回SAGAシンポジウム」にて、おらけんとしてブース出展予定。
[熊本県・17日:東海大学熊本キャンパス、18日:熊本市動植物園]

 

【学会発表等】
● 9月7日(金)〜10日(月)
・久世が「日本哺乳類学会2018年度大会」で発表します。
[長野県・信州大学 伊那キャンパス]

 

● 9月22日(土)〜24日(月)
・理事の田島が、野生生物と霊長類に関する国際シンポジウムで発表します。
[京都府・京都大学]

 

● 9月28日(金)〜30日(日)
・理事の田島が、「日本動物行動学会第37回大会」で発表します。
[京都府・京都大学 理学研究科]

 

● 10月16日(火)〜17日(水)
・久世が、国際シンポジウムで発表予定。
[マレーシア(ボルネオ島サバ州)・サバ大学/Universiti Malaysia Sabah]

 

(3) 研究者によるニュース/論文解説
【論文紹介】 Global Demand for Natural Resources Eliminated More Than 100,000 Bornean Orangutans
(世界的な自然資源の需要が、10万頭のボルネオオランウータンを排除した)

 

ボルネオ島のオランウータンが、1999〜2015年の16年間で約148,500頭以上が減少した、という論文が「Current Biology」に掲載されました。生息数減少の主な要因は、林業やパームオイル(ヤシ油)農業、鉱業や製紙業などによる森林伐採と言われています。このまま森林伐採が続けば、今後35年の間に、45,300頭が減少してしまうそうです。これまで、ボルネオオランウータンの生息数は、2004年の時点で54,000頭(Wich et al. 2008)と公表されてきたので、やや混乱された方もいたかもしれません。生息数自体については、これから別な論文も出るようなので、この論文をもとに、現在の生息数について具体的なことを述べるのは、今のところ難しいでしょう。いずれにしても、近年の密度調査の更新により、昨年、スマトラ島の生息数が大幅に修正されたので(6,600頭→14,600頭に修正, Wich et al. 2016)、ボルネオ島の生息数も見直される段階に入りました。本論文はその第一歩と言えます。
この論文で重要な点は、この研究グループは、ボルネオ島内で広範囲にわたるインタビュー調査を行い、オランウータンがプランテーションを荒らす害獣として、あるいは、密猟や食肉用として人間に殺されている事実を、定量化したことです。これまで、生息数の推定を分析する研究において、殺害による人為的影響は過小評価されてきました。ある地域では、少なくとも1年のうち平均2-3頭は殺されているそうです。たとえ年間に数頭だとしても、オランウータンの繁殖のペースは非常に遅いため(6-8年に1頭を出産)、各集団内のメスの死亡は、地域個体群消失の大きな要因につながります。研究者らは、森林保護だけでなく、オランウータンの殺害を禁止する対応が必要だと警告しています。

 

引用:Voigt M 他 (2018) Global Demand for Natural Resources
Eliminated More Than 100,000 Bornean Orangutans. Current Biology.
Volume 28(5):761 ?
769.
http://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(18)30086-1

 

Wich SA 他 (2008) Distribution and conservation status of the
orang-utan (Pongo spp.) on Borneo and Sumatra:how many remain?. Fauna & Flora
International, Oryx 42 (3):329-333.

 

Wich SA 他.(2016). Land-cover changes predict steep
declines for the Sumatran orangutan (Pongo abelii). Science Advances.
2(3): e1500789.

 

(4) ボルネオ島ダナムバレイ調査報告
日本の南、赤道のあたりにボルネオ島があります。
島といっても、面積は日本の約1.9倍、世界の島の中では3番目に大きな島です。
国は、マレーシア、インドネシア、ブルネイの3か国からなります。
この島の北部のマレーシア側のサバ州に、ボルネオオランウータンが生息するダナムバレイがあります。

 

2018年前半にボルネオ島に渡航し、ダナムバレイでオランウータンの調査を行いました。
2018年2月5日〜11日:金森朝子
2018年3月11日〜22日:蔦谷匠
2018年5月2日〜15日:久世濃子
2018年7月2日〜15日:金森朝子

 

2018年7月 調査報告
7月上旬、乾季が始まったばかりのダナムバレイを訪れました。調査を始める前に、まずは 森をぶらぶら歩いて森林の開花・結実状況を把握するのが恒例です。今年は、植物の開花率が少なかったため、これから始まる果実期も小規模なものになりそうでした。今回は、一斉開花・結実期の予兆であるフタバガキ科の開花をほとんど確認できなかったので、残念ながら今年も一斉結実は見送りになるようです。
しかし、オランウータンの大好物であるテルミナリアという果実がちょうど結実していた時期だったので、「これは簡単にたくさんのオランウータンに会うことができるぞ」、と今回の調査が楽なものになることを予測してニヤニヤしてしまいました。このように、オランウータンの大好物な果実が調査地のあちこちに結実している期間は、オランウータンを探して森の中を探し歩かなくても、旬の果実のある樹木を見てまわれば、簡単にオランウータンに出会うことができます。案の定、今回の滞在では、たくさんのオランウータン達の姿を確認することができました。 今回の野外調査で、特に興味深かったのは、フランジ雄の交代が起こっているのかもしれないと思うような観察をすることができたことです。フランジ雄は、どこからかやってきて数年の間その姿を頻繁に見かけますが、やがていなくなってしまいます。ダナムバレイでは、ここ数年ばかり、ABU(アブ)という名前のフランジ雄が、調査地で頻繁に観察されていましたが、2017年3月を最後にその姿を見なくなりました。そして、今回の調査では、ABUがいなくなる少し前2016年から滞在しているSON(ソン)というフランジ雄と、2018年4月に新しく調査地周辺で確認されるようになったKONG(コン)というフランジ雄の2頭を頻繁に見かけました。この2頭は、1kmほど離れて距離を保ちつつも、お互いを強く意識して遊動しているようで、1日に何度かそれぞれのロングコールを聞きました。おそらく、調査地に数本しかないテルミナリアの果実の木を巡って、お互いをけん制しながらも、回避しつつ、それぞれが採食できるように動いていたのでしょう。古株のフランジ雄がいなくなり、新しいフランジ雄達を頻繁に見かけるようになると、新しい展開にわくわくする気持ちもありますが、ABUはどうしたのだろう、というさみしい気持ちも残ります。今後、オス同士の関係がどう変化していくのか、そして、メス達とどのような関係を築いていくのか、大変楽しみです。

 

【オランウータン豆知識】
● 一斉開花・結実(いっせいかいか・けつじつ)
東南アジアの熱帯雨林では、数年に一度という不定期な間隔で、フタバガキ科を始めとする多くの植物が一斉に開花・結実する「一斉結実」「一斉開花」とよばれる現象が起こります。

 

● フタバガキ科(ふたばがきか)/学名:Dipterocarpaceae
「一斉開花・結実」の時期に一斉に開花・結実する代表的な樹種です。
アジアの熱帯雨林に多く分布し、樹高50m以上の巨木になる樹種も多くあります。
フタバガキ科の植物の種子は「羽根突き」の羽のような独特の形をしています。

 

● フランジ雄(ふらんじおす)
オトナのオスの顔の両脇にある張り出しをフランジ(Flange)と呼びます。
フランジはオスの中でも特に優位なオスに現れる特徴です。

 

● ロングコール(ろんぐこーる)
フランジ雄は、大きなのど袋を使ってロングコール(Long call)という音声を出します。
この音声は、フランジ雄だけが発することができる音声で、他のオスに自分の居場所を主張したり、発情したメスを誘ったりする役割があると言われています。

 

● 遊動(ゆうどう)
ある特定の地域を動き回ることを意味し、遊動域ならば行動圏と同じような意味になります。
なお、その地域には他のオランウータンも自由に侵入できるので、縄張りやテリトリーとは違う意味になります。

 

【報告書?写真付き】
この調査報告の写真付きの記事は、こちらからご覧いただけます。
http://www.orangutan-research.jp/report/areport/entry33.html

 

(5) オランウータンQ&A
オランウータンに関して、よくある質問にお答えしました。

 

Q1:オランウータンの好きな食べ物はなんですか?
A1:野生オランウータンが一番好きなのは野生のドリアン、マンゴスチンなどの果肉が柔らかくて甘い果物です。
でもこうした果物は数年に一度しか実らないことが多いので、毎年実をつけることが多い、イチジクやカキの実もよく食べます。
動物園では、個体によって好みがわかれますが、果物が好きな個体が多いです。

 

Q2:なぜ、オランウータンというの?
A2:現地の言葉であるマレー語(インドネシア語)で、「オラン=人」、「ウータン(フータン)=森」という意味があり、「オラン・ウータン=森の人」となります。
日本人はマレー語で「オラン・ジュポン」です。
あまり知られていませんが、ボルネオ島やスマトラ島には多くの先住民族が住んでいて、彼ら自身の言語があり、オランウータンについても固有の名称があります。
「マワス、コギュウ、キサウ」などがあり、オス・メスで違う名前をつけている民族もいます。

 

(6) クラウドファンディング報告
1) 2016年6月〜8月にJapanGivingで行ったクラウドファンディング「ボルネオ島での日本人による野生オランウータンの長期野外調査を継続したい!」でいただいた寄付金の収支報告は下記になります。

 

<2016年>
寄付金:+1,285,886円
リターン作成・発送費用:-26,709円
手数料等:-115,693円
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残高:+1,143,484円

 

<2017年>
調査助手給与:-1,038,686円
植物同定費用:-59,553円
備品購入等:-25,155円
----------
残高:+20,090円
※残金は2018年の調査助手給与に使用しました。

 

ご支援いただいた皆さん、ありがとうございます!
2017〜2018年の活動報告は、下記サイトに写真入りで掲載しています。
http://orangutan-research.jp/report/areport/

 

2017年の活動報告(ニュースレター)を2018年1月26日に、サポーターの皆さんにメールでお送りしています。
再送を希望される方は事務局(☆→@)までご一報ください。

 

2) 2016年12月にJapanGivingで行ったクラウドファンディング「野生オランウータンの夜間観察に挑戦します!」でいただいた寄付金の収支報告は下記になります。

 

<2016-2017年>
寄付金:+325,872円
リターン作成・発送費用:-77,218円
調査備品購入:-118,293円
----------
残高:+133,359円
※残金は2018年の調査助手給与に使用しました。

 

夜間観察の報告書と、リターンの「ダナムバレイの夜の森の音」を、ご寄付いただいた方向けに、2017年11月3日にメールでお送りしました。
再送を希望される方は、事務局

までご一報ください。

 

なお、今後のオランウータン研究のために、現在、下記サイトにて通年で寄付を受け付けています。
500円から寄付していただけます。
ご賛同いただける方、ご協力よろしくお願いいたします。
https://japangiving.jp/campaigns/5309

 

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【編集後記】
計画しながらなかなか発行できなかったメールマガジン(メルマガ)、ついに創刊号を発行することができました。
オランウータンや研究のことなどについて興味をもっていただけるとうれしいです。
よりわかりやすく、おもしろいメルマガにするために、サポーターの皆さんからご意見、ご感想をお待ちしています!
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