スマトラ島のオランウータン施設の地滑り被害について
先日のNHK「国際報道」でスマトラ島のオランウータン施設の被災が取り上げられていました。
番組では具体的な施設名まではでていなかったため、東山動植物園のオランウータン関係者とおらけんのスマトラ担当者で、調べた公式情報や現地団体の方に伺った情報などをまとめましたのでお伝えします。
被害概要
被害を受けたのは、北スマトラ州シボランギットにある SOCP(Sumatran Orangutan Conservation Programme)オランウータン検疫・リハビリセンター です。
2024年11月の豪雨による土砂崩れで、獣医クリニックや一部ゲージが全壊、41頭のうち18頭が一時脱走しました。
その後全頭が保護されましたが、衰弱していた1頭が死亡しました。
被害の規模を考えれば、きわめて最小限の被害にとどまったといえます。
その後、2頭はOrangutan Heaven(オランウータンヘイブン)へ移動、4頭はジャンビ州の再導入地へリリースされ、33頭が無事だった大型の社会化ゲージに集められ、ケージ内エンリッチメント強化で仮設ケアを続けられています。
被害見積は50万米ドル規模で、発生直後の緊急募金で30万米ドル超が集まり、急場を乗り切ったようですが、再整備のための費用など長期的な支援が求められています。


復旧状況
被害直後にSOCPから公開された報告動画では、SOCPの創設者であるイアン・シングルトン博士(Dr. Ian Singleton)が英語のナレーションで被害状況を説明していました。
そちらより、おおまかな抜粋
・一部ケージや隔離設備は再使用可能。
・新しい仮設ケージの設置が進行中。
・隔離ケージ12基と獣医クリニックは直撃により壊滅的な被害
・発電機・給水塔・バイオセーフティケージなどは無事。
・社会化ゲージは無事でスタッフの尽力で変わりない日々を過ごすよう努めている。
・スタッフや地域住民が協力し、瓦礫撤去や修復作業を進めている。
といった状況のようです。
「地滑りは“山の消失”と呼べる規模でしたが、現地チームは前を向いて動き続けています」


SOCPとは
SOCP(Sumatran Orangutan Conservation Programme)は、
スイスの環境団体 PanEco と、インドネシアの YEL(Yayasan Ekosistem Lestari) が中心となり、
インドネシア政府と協働で運営されています。
主な活動:
保護・治療・リハビリセンター運営
野生復帰(アチェ州ジャントー、ジャンビ州ブキ・ティガプル)
障がい個体の長期飼育・環境教育(Orangutan Haven)
森林保護と地域支援
これまでに450頭以上を保護し、300頭超を野生に戻すという成果を挙げています。
SOCPへ寄付
SOCPとPanEcoの公式寄付ページから、直接支援が可能です。
(いずれも信頼できる公式サイトです)
SOCP公式寄付リンク
→https://sumatranorangutan.org/standard-donation/
PanEco公式寄付ページ
2019年おらけん訪問時の様子
2019年2月おらけんではスマトラ島のスタディツアーを実施し、今回被害にあったセンターも訪問しました。
イワン・シングルトン博士やスタッフの皆さんに、スライドを使った講義や、センター全体の案内など、温かく熱心に迎えていただきました。
スマトラオランウータン保全にかける熱意にも深く心を打たれました。
それだけに、今回の被災には胸が痛みます。
ここでは、当時の訪問の様子をいくつか写真でご紹介します。





最後に
SOCPスタッフからは次のようなメッセージが届いています。
「日本の皆さんからのご支援を心よりお待ちしております。
関心を寄せてくださり、本当にありがとうございます。」

日本から関心をよせ続け、寄付を通じて支えることは、現地の保全活動に大きな力となります。森へ帰る日を待つオランウータン、そして地滑り被害にも負けず活動を続ける人々に、これからも思いを寄せていただければ幸いです。